『ミュージカル』といえどプロダクションがいくつかある
『ミュージカル』と聞くと何を思い浮かべますか?
ディズニー作品をよく上演している『劇団四季』?
煌びやかな衣装に名物の大迫力のロケットダンスの華やかな『宝塚歌劇団』?
ミュージカルと聞くと『山崎育三郎さん』とか『新妻聖子さん』が出ているイメージかな
劇団四季、宝塚歌劇団はその名の通り日本を代表する『劇団』です。
それに対して、山崎育三郎さんや新妻聖子さんはそれぞれ芸能プロダクションに属している俳優さんで、その俳優さん達をオーディションなどで集めて『帝国劇場』や『日生劇場』でミュージカル作品を上演しているのが、映画製作で有名な『東宝』による『東宝ミュージカル』と呼ばれるものや、有名な芸能プロダクション『ホリプロ』による『ホリプロステージ』、劇場が主催となり上演するものなどがあります。
なんとなく違いがわかったかな…?
違いをわかってもらえるとミュージカルのチケットも探しやすくなるよ!
それでは各劇団と各プロダクションの違いや有名な上演作品、劇団出身俳優を解説します。
劇団四季について
ディズニー作品を中心に上演
ミュージカルの中でも劇団四季の作品なら何かしら観たことがある方は多いのではないでしょうか。
関東圏出身の方ですと遠足や音楽鑑賞教室、などで学生時代に観たよ!という方も多いです。
劇団四季の公演に出演している俳優には2種類。
- 劇団四季所属俳優
- 芸能プロダクション所属/個人活動の俳優とフリー契約
によって公演が成り立っています。
劇団四季の理念の一つとして、『作品主義』があります。
これは俳優を前面に押し出すのではなく、先品に重きを置く作品作りが特徴的です。
ですので俳優さんが劇団四季を退団されても公式発表されることはありません。本人のSNSアカウントが新しく作られて退団したと発表しファンが知るというパターンが多いです。
またその一例が、四季の舞台に貫かれている厳格な実力主義です。テレビや映画などで有名なスターを、その知名度を生かしてキャスティングすることはありません。舞台俳優にとって重要なのは、知名度よりも観客を感動させる技術と能力です。俳優は作品を輝かせるために存在するのであって、その逆ではありません。
四季は全ての実力ある俳優たちに門戸を開き、公平なオーディションを通してキャストを決定します。四季が、年間300万人強という一劇団としては日本最大の観客動員を実現しているのは、作品のクオリティを最優先に考える舞台造りに、多くのお客様が共感してくださっているからに違いありません。
劇団四季公式HP会社概要より抜粋(https://www.shiki.jp/group/company/about.html)
公式HPの各作品のページには他のミュージカルならかならずある「キャスト」のページがありません。
毎週月曜日に各公演の配役が発表されて、先週「ライオンキング」に出演していた俳優が今週は「アラジン」に出演する、というのは当たり前。基本的にロングラン公演が多いためトリプルキャスト以上が常時そろっています。
上演している主な作品
「劇団四季ってライオンキングでしょ?」
と思われている方が大半だと思いますが、上演作品はそれだけではありません。
劇団四季による主な上演作品をご紹介します。
ディズニー作品(ウィキッド)
- ライオンキング
- アラジン
- アナと雪の女王
- リトルマーメイド など
ブロードウェイ・ロンドンミュージカル系
- オペラ座の怪人
- CATS
- WICKED(ウィキッド) など
オリジナル作品
- バケモノの子
- ロボット・イン・ザ・ガーデン
- ミュージカル「李香蘭」 など
専用劇場を持ち、基本的に1年近くロングラン公演をするのは劇団四季の特徴です。
特に「ライオンキング」は劇場を変えながら20年以上無期限ロングラン公演をしています。
「母音法」という発声練習を行っているため、とにかくセリフの聞きやすさは日本一です!
下を向いていてもきちんと聞こえ、確実に耳に入ってくるので観ている観客を置いてけぼりにしないような工夫をされているのも特徴です。
劇団四季出身の主な俳優
劇団四季は1953年の結成からもうすぐ70周年を迎えます。
この70年の間にもミュージカル界はもちろん、テレビや映画でも大活躍する著名な俳優を沢山排出してきました。
劇団四季出身の方が舞台に出ていると、やはり劇団四季らしさを残しながら演じられているのが分かります。実力主義の劇団四季で培われた技術が舞台上で垣間見えると、さすが劇団四季出身の俳優だな、と感じさせられるとともに観劇していて目も耳も安心して観ることができます。
- 市村正親
- 鹿賀丈史
- 石丸幹二
- 山口祐一郎
- 堀内敬子
- 濱田めぐみ
- 海宝直人
- 柿澤勇人
宝塚歌劇団について
煌びやかなステージと衣装は圧巻!
『宝塚歌劇団』は、阪急阪神ホールディングスによるエンタテインメント事業の一つとして存在し、出演する劇団員全員が女性ということは言うまでもありませんが、今日まで100年以上続く日本の由緒ある歌劇団です。
「宝塚音楽学校」へ入学して2年間芸事の勉強をし、卒業した者だけが「宝塚歌劇団」に入団することができます。宝塚音楽学校は1学年40人定員と超超超狭き門で、毎年テレビで受験密着のドキュメンタリー特集が放送されているので観たことがある方もいるでしょう。
娘役と男役に分かれ、宝塚メイクと呼ばれる特徴あるお化粧や、専用劇場の舞台の造りもセリや盆が多用されているとても豪華な造りとなっており、特に大階段を降りてくるタカラジェンヌは本当に輝いて見えます。
宝塚歌劇団は5組1科から成り立ち、各組が公演をローテーションで行っていて、常に3~4組が常に公演しています。
【2022.11月現在】
- 花組 柚香光/星風まどか
- 月組 月城かなと/海乃美月
- 雪組 彩風咲奈/朝月希和
- 星組 礼真琴/舞空瞳
- 宙組 真風涼帆/潤花
- 専科(各組で活躍された方のエキスパート集団で各組に毎回1~2人が出演しています)
劇団四季と真逆で「スター制度」を取り入れており、各組には必ず「男役トップスター」「娘役トップスター」が存在し、公演の主役は「男役トップスター」が演じることになります。
女性だけで一つの作品を創り上げる、世界的にみても唯一無二の劇団です!
宝塚歌劇団による主な上演作品
「宝塚って”ベルばら”をずっとやってるんでしょ?」
そう思った方に衝撃な事実を申し上げると、実は最後に”ベルばら”を上演したのは2014年。
2022年現在、8年間も上演されていないんです!
私自身も、生でベルばらを観劇したことはありません…。
いつか観てみたい作品の一つです。
それでは、どんな作品を上演しているのかご紹介します。
ベルばらだけではなく、洋物作品から日本物、悲恋や不倫もの、映画やアニメの舞台化など多種多様な作品が沢山上演されています。
- 『エリザベート』
- 『ロミオとジュリエット』
- 『オペラ-アイーダより-「王家に捧ぐ歌」』
- 『壬生義氏伝』
- 『オーシャンズ11』
- 『花より男子』
- 『今夜ロマンス劇場で』
- 『るろうに剣心』
宝塚の公演は基本的に1幕が「お芝居」で2幕が「ショー作品」の形となります。
「エリザベート」「ロミオとジュリエット」などは「1本物」と呼ばれ、1幕と2幕を通して上演され、2幕の終わりにちょっとしたショー「フィナーレ」が付き、どんな作品であれ最後には必ず華やかで煌びやかに締めくくられます。
宝塚といえどその中でも組織化されていて複雑なのね…
私もはじめの頃は他のミュージカルとはシステムが全く違い、覚えることが沢山あって大変だったよ!知れば知るほど奥が深くて、それがまた面白いんだ。
宝塚歌劇団出身の主な俳優
こちらも宝塚歌劇団を卒業されて、芸能界で活躍されている俳優さんが沢山いらっしゃいます。
- 大地真央
- 涼風真世
- 黒木瞳
- 真矢みき
- 天海祐希
- 花總まり
- 檀れい
- はいだしょうこ
- 朝夏まなと
- 愛希れいか
東宝ミュージカルについて
東宝ミュージカルは日本のミュージカルの中心的存在!
「東宝ミュージカル」と呼ばれるものは、映画製作で有名な東宝株式会社演劇本部の事業による上演作品にあたります。
東宝ミュージカルには劇団は無く、グループ会社である「東宝芸能株式会社」に所属する俳優や、他芸能事務所に所属している俳優、オーディションによってキャスティングされています。
「宝塚歌劇団」を最初に創った小林一三が「東宝」を創ったのも有名な話だね。
東の宝塚、そこから東宝と名付けられたんです!
「劇団四季」、「宝塚歌劇団」を退団した俳優さんが多く出演されているのが、この東宝ミュージカルです。どの作品もだいたいがミュージカル俳優の中に、元劇団四季俳優、元宝塚歌劇団俳優がミックスされた状態で1つの作品を創り上げています。
東宝が所持している劇場は
- 帝国劇場
- シアタークリエ
の2つの劇場のみ。
この他にも「日生劇場」「東京建物 Brillia HALL」「梅田芸術劇場」など借りて上演されることもあります。
東宝による主な上演作品
東宝ミュージカルと聞いてもピンと来ない方が大半だろうと思います。
しかしミュージカルと言えばコレ!な作品は、日本では大抵東宝が上演しています。
- 『レ・ミゼラブル』
- 『ミス・サイゴン』
- 『エリザベート』
- 『モーツァルト!』
- 『RENT』
- 『屋根の上のヴァイオリン弾き』
- 『ラ・マンチャの男』
ミュージカルとは少し違いますが、ジャニーズ関連の舞台(Endless SHOCKやDREAM BOYS)も東宝が主催となり上演しています。
「エリザベート」は1991年に宝塚歌劇団で初演されたのち2000年に東宝版として上演されました。
日本では「チケットが一番取れないミュージカル」として、今も宝塚版、東宝版どちらも再演が続いています。
その他のミュージカル|ホリプロステージ・劇場主催など
ホリプロステージ
芸能事務所として有名な『ホリプロ』が運営と制作を行い上演しています。
「ストレートプレイ」作品を多く上演しつつも、オリジナルミュージカル作品も造り続けています。
- 『ピーターパン』
- 『ロミオ&ジュリエット』
- 『メリー・ポピンズ』
- 『スリル・ミー』
- 『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』 (2023.3~上演予定)
※「ハリーポッターと呪いの子」は東宝と共同主催かつ、あくまでも舞台作品の為除きました。
劇場主催のミュージカル作品
劇場側が主催してその公演をする場合もあります。
有名なのは、大阪梅田に位置する「梅田芸術劇場」による公演で「梅芸作品」とも呼ばれます。
実は「梅田芸術劇場」は阪急阪神ホールディングス エンタテインメント事業のひとつ。つまり「宝塚歌劇団」と同じ事業内です。
- 『アナスタシア』
- 『INTO THE WOODS』
- 『ファントム』
- 『ドリーム・ガールズ』(2023.2~上演予定)
テレビ局主催のミュージカル|日テレ主催『アニー』
『宝塚音楽学校受験密着』『劇団四季の子役オーディション』に続いて有名なのがミュージカル『アニー』の子役オーディションですよね。毎年ゴールデンウィーク頃に上演される『アニー』は「日本テレビ」主催により初演の1986年当初から上演され続けています。
ミュージカル界の種別を覚えて気になるチケットを取ろう!
以上がミュージカルの主催や団体についての紹介でした。
日本におけるミュージカル作品は、
- 劇団四季
- 宝塚歌劇団
- 東宝ミュージカル
- ホリプロステージ
- 劇場主催(梅田芸術劇場「梅芸作品」)
によって分かれています。
ご紹介した通り、それぞれ特徴が全く違うので、是非見比べてみてください。
公演作品によって劇団や主催が変わることを理解し意識すると、観たい作品がどこで上演されるのかがわかり公演チケットの情報を取りやすくなります。
ミュージカルファンの中でも「劇団四季だけ観る人」「宝塚だけ観る人」「東宝ミュージカル系だけ観る人」とファン層が大きく別れているので既に観ている方も、気になる作品があればぜひ観に行って文化の違いを感じてもらいたいです。宝塚のショーで使われている曲はこの作品の曲、東宝版のエリザベートと宝塚版のエリザベートの違いを楽しめる、それぞれの背景と文化を知っておくと作品の理解度も深まります。
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